徳永・松崎・斉藤法律事務所

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事務所報
大手門ロースクール
事務所報55号

弁護士は不足しているか?

[ 弁護士 松ア 饐
  •  当事務所の話ではありません。 日本全体での話です。
    日本全体で2万2千人, 福岡県で7百人近くの弁護士がいます。 しかし, 「裁判所はあるのに弁護士がいない市町村がいくつもある」 「都市部でも, 身近に相談できる弁護士がいない」 「弁護士は知っているが, 垣根が高い」 と言われ, 弁護士の絶対数が不足していると指摘されています。
    外国と比較しても, 日本では弁護士一人当たりの国民が6千人程度なのに対し, アメリカでは3百人程度, イギリス・ドイツで7百人程度, フランスでも1千6百人程度であって, 日本の弁護士は少なすぎるとされています。
  •  そこで, 現在, 「生めよ育てよ」 運動が展開されています。 司法試験合格者数の拡大です。
    私が司法試験に合格した昭和46年当時の合格者は5百人でしたが, 平成の初め頃から合格者数は徐々に増加して, 平成11年には1千人, 16年には1千5百人の合格者を出すようになりました。 さらに, 22年からは毎年3千人を合格させることとなっています。
    この結果, 平成30年頃には弁護士数が5万人程度に増加すると予想されています。
  •  ところで, 司法試験合格者の拡大と弁護士数の増加が進行する中で, 見過ごすことのできない現象が現れてきました。
    その一つは, 司法試験合格者と新人弁護士の能力低下です。
    1千5百人の合格者が出るということは, 上位5百人は従来の試験でも合格した人たちですが, 中位の5百人は来年にならなければ合格できなかったはずの人たちであり, 下位の5百人は再来年でなければ合格できない人たちです。 司法研修所 (司法試験合格者の教育機関) の教官の話として, 「3割は問題ないが, 箸にも棒にもかからない合格者が3割は居る。 真ん中の4割は教育すれば何とかなるかも。」 といった評価も聞こえてきます。
    しかも, 合格者が増えたため教育施設が不足する事態となり, 合格者に対する教育期間 (司法修習生の期間) は2年から1年に短縮されてしまいました。 当然のことながら, 十分な教育を受けていない新人弁護士が出現することとなりました。 訴状や準備書面すら満足にかけない新人弁護士も現れたと, 言われています。 (念のため申しますが, 当事務所の若手弁護士は資質優秀であり, 事務所内勉強会で日々研鑽を積んでいますので, ご心配には及びません。)
  •  その二つ目は, 就職浪人の出現です。
    司法研修所での教育が終わると, 弁護士志望者は既存の法律事務所に就職する (イソ弁) のが通常のコースです。 しかし, 弁護士が増えるといっても, 弁護士の仕事が急激に増えるものではありませんから, 既存の法律事務所による新人採用数はさほど増加しません。 この経済原則ために, 司法修習生の就職戦線は冬の時代を迎えています。
    新人弁護士の初任給は, 昨年までは6百万円台とされていましたが, 今や, 4百万円台と囁かれています。 さらに, 「軒弁」 という言葉も生まれました。 既存弁護士の事務所の軒先に机と電話を置かしてもらう (無給の) 弁護士で, 事実上の就職浪人です。
  •  このような現象は, 弁護士が提供する仕事の質の低下を招き, ひいては利用者に迷惑をかけることにもなりかねません。 このような危惧観から, 「本当に弁護士は不足しているのだろうか」 との疑問の声も上がっています。
    日本には, 司法書士・税理士・弁理士・行政書士・社会保険労務士といった法律関係の専門職種の人たちが14万人ほどおり, これらの人たちを加えると, 諸外国と比較しても法律関係の専門職が少ないとは言えない, との指摘もなされています。 (因みに, トム・クルーズ主演の映画 「ローファーム」 にも描かれていたように, アメリカの弁護士は, 税金問題を取扱うなど日本よりも広い業務範囲をカバーしているようです。)
    このまま弁護士増員が進行すると, 日本でも, 「救急車の後を追いかける弁護士」 「病院の待合室で患者に名刺を配りまくる弁護士」 が出てくるのではないか, と脅す声もあります。
  •  とは言うものの, 「普通の国民にとって身近に弁護士がいない」 実情は, まだまだ改善されていないと思われます。 質が悪くても居ないよりはましだ, との意見もあります。
    どの程度の数が適正規模といえるのか, 困難な問題を抱えながら, 弁護士の増員が進んでいます。

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