徳永・松崎・斉藤法律事務所

弁護士の社外取締役の適性について

2015年08月03日更新

永原 豪 弁護士

  1.  会社法改正による社外取締役の選任の拡大
    平成26年の会社法改正では,一定の株式会社(公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で有価証券報告書の提出義務があるもの)では,社外取締役を置いていない場合,株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示が求められるというコンプライ・オア・エクスプレイン・ルールが採用されました。しかしながら,立法担当者は,「社外取締役を置くことが相当でない理由」は,各社の事情に応じで行われるべきものであるとして具体例を提示しない方針をとっている上,実務家からは「相当でない理由」は極めて限定的であるとの指摘がなされているところであり,社外取締役の選任が強く促される結果となっています。
    さらに,上場規則は独立役員を1名以上確保することとされたほか,平成27年6月1日に適用された「コーポレート・ガバナンスコード」の原則4-8では,独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきものとされ,上場企業では社外取締役を置くかおかないかではなく,何名置くのかに関心が移行しているのが実情です。なお,福岡証券取引所では,コーポレート・ガバナンスコードについては,基本原則に限って適用されていますので,この原則4-8についての直接の適用はありません。
  2.  社外取締役の選任状況
    統計上も社外取締役の選任が進んでいることは顕著であり,平成27年7月23日現在,東京証券取引所の上場企業3473社(1部・2部・マザーズ・JASDAQ)のうち社外取締役を選任している企業は3049社で約87㌫(平成27年2月段階では約67㌫)に及んでおり,2名以上選任している企業は1609社で約46㌫となっています。福岡でも,これまで社外取締役を選任していなかった企業のほとんどは新たに社外取締役を選任する対応を講じており(監査等委員会設置会社への移行を含む),対象となる上場企業において社外取締役の選任がない会社はないといっても過言ではありません。
  3.  社外取締役としての弁護士
    弁護士は法律の専門家であり,取締役の善管注意義務や経営判断原則について理解しているとして,社外役員の趣旨から適性が認められると考えられており,当事務所でも3名の弁護士が上場会社の社外監査役に就任しております。
    社外取締役は,取締役の業務執行について,ブランド価値・レピュテーション等の社会的評価を含めた企業価値を最大化し,かつ企業不祥事等による企業価値の毀損をさけるため,内部統制を含めたガバナンスや法令遵守等経営全般のモニタリングを行い,また業務執行に関与しない範囲でアドバイスを行うことが期待されているとされており(社外取締役ガイドライン),弁護士にその適性が認められることに変わりはありません。弁護士を社外取締役に選任する上場企業も増加しており,当事務所からも家永弁護士が新たに上場会社2社の社外取締役に就任しております。
  4.  雑感
    個人的には,社外取締役の選任が企業価値の向上につながるかどうかは明らかではないこと(複数の社外取締役を選任していた東芝においても不祥事が発生していることからもご納得いただけるのではないでしょうか。),社外取締役候補者の確保の困難性等の観点(東京等の大都市ではない福岡のような地方都市では,経営経験のある人材を見つけ出すのは一層困難となります。)から社外取締役の選任を必要以上に強調することについては若干の疑問を感じざるをえません。
    しかしながら,現在の法律等を前提とした場合,社外取締役の複数選任を求める動きは強まるものと推測されます。現在は,経営者が自己のつてで知人等を社外取締役として確保しているのが実態だとの指摘もありますが,今後は,社外取締役を選任しているかだけではなく,適切な人材を社外取締役として選任しているかどうかが問われることになると思います。
    社外取締役の選任を求める方の趣旨に適う適切な人材を見つけることは困難な作業ではありますが,弁護士を社外取締役・社外監査役に選任することをご検討になさる場合にはぜひご相談ください。法の趣旨に適った人材を提供できるよう,さらに所内の体制を充実させていきたいと考えております。

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