徳永・松崎・斉藤法律事務所

相談役・顧問等の開示制度に対する実務対応

2018年04月14日更新

永原 豪 弁護士

  1.  相談役・顧問等開示制度の導入経緯
    東京証券取引所が昨年8月2日,「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(以下「CG報告書」といいます。)の様式及び記載要領の一部を改訂し,CG報告書において「代表取締役社長等を退任した者の状況」として相談役・顧問等についての情報を開示する制度(以下「本件開示制度」といいます。)を新設しました。
    これはコーポレート・ガバナンスへの関心の高まりと度重なる企業不祥事等を背景として機関投資家を中心として相談役・顧問制度の弊害が問題視されるようになったことが契機となって新設されたものです。具体的には,経済産業省のコーポレートガバナンスシステム研究会が公表した「コーポレートガバナンスシステムに関する実務指針」(以下「実務指針」といいます。)において,社長・CEO経験者を相談役・顧問とすることが一律に良い・悪いというものではない」とした上で,相談役・顧問制度に関して6つの提言をし,これを受けて政府が平成29年6月9日「未来投資戦略2017」において,相談役・顧問制度に関する開示制度を創設することを公表したことを受けて新設されたものです。なお,議決権行使助言機関であるISSは,定款変更議案において,相談役制度を新設する場合には,取締役の役職として提案される場合を除き,原則として反対を推奨するとしています。
  2.  相談役・顧問等開示制度の概要
    本件開示制度では,相談役・顧問制度について説明する場合には,それぞれの者ごとに氏名や役職・地位,業務内容,勤務形態・条件(常勤・非常勤,報酬有無等)及び代表取締役社長等の退任日,相談役・顧問等としての任期を記載するとともにその合計人数を記載するとされています。また,開示すべき「その他の事項」として,相談役・顧問等の存否にかかる状況(廃止済み,制度はあるが現在は対象者がいない等),相談役・顧問等に関する社内規程の制定改廃や任命に際しての取締役会や指名・報酬委員会の関与の有無,相談役・顧問等の報酬総額等を記載することが考えられると例示されております。
    本件開示制度は,記載要領にて,各社が相談役・顧問制度について「説明する場合」となっているようにあくまでも任意の制度となっています。しかしながら,機関投資家の関心が高いこと,実務指針における提言内容や昨今の議論状況に鑑みると,任意の制度であるからといって開示しないという対応が困難であり,上場企業においては本年から相談役・顧問等の制度についての開示が不可欠になると思われます。
  3.  相談役・顧問等開示制度に対する実務対応
    相談役・顧問制度に関する近時の議論を踏まえ,既に相談役・顧問制度を廃止した企業(平成28年の東芝,平成29年のJフロントリティリング,資生堂等)も相当数存在しています。しかしながら,実務指針でも指摘されている通り相談役・顧問制度自体が悪というわけではありません(個人的には,相談役・顧問制度の有用性もあると考えています。)ので必ずしも廃止する必要がありません。
    企業においては,これまで慣例として意識せずに継続していたと思われる相談役・顧問制度について,これを機会にその必要性等を検討した上で,実務指針における指針等を踏まえ,適切な情報開示が重要です。具体的には,相談役・顧問制度の具体的内容(人数、選任基準や手続,任期,権限・責任,報酬等)や運用状況をその根拠を含めて改めて確認することが出発点になり,その上で相談役・顧問制度の存続について検討すべきことになります。その結果,相談役・顧問制度が有益であるということ出れば制度を維持する方向で検討することで問題ありませんが,その際には①相談役・顧問に期待される役割を明確化,②選任手続の客観化,③報酬等の待遇の明確化等を検討した上で,適切に情報を開示することが必要となります。
    本件開示制度の導入を機会に,各社における相談役・顧問制度の見直しを行い,機関投資家からの懸念を払しょくするような情報開示ができるかどうかが肝要ですが,具体的な検討に当たって,ご不明な点等ございましたら当事務所までご相談ください。

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