徳永・松崎・斉藤法律事務所

取締役会の招集手続に瑕疵がある場合の取締役会決議の効力について
(東京地裁平成29年4月13日判決)

2019年04月25日更新

家永 由佳里 弁護士

  1.  事案の概要
    Y社の代表取締役であった原告Xが,平成27年8月28日になされたXを代表取締役から解職する旨の取締役会決議について,Xに対する適法な招集通知がなされていない瑕疵があり無効であるとして,取締役会決議無効の確認を求めた事案である。
    → 取締役会の招集手続に瑕疵があるものの,決議は有効と判断された。
  2.  事実関係
    取締役会の招集通知は,取締役会前日27日の午後11時23分に全取締役らのメールアドレス宛に送信された。当該メールには,翌28日午前9時30分から臨時取締役会を開催すると記載されていた。
    定款上は,取締役会の招集通知は会日の3日前までに発する,緊急の際はこの期間を短縮できるという定めがなされていた。
  3.  招集通知の到達の判断基準とあてはめ
    実際に了知されることまでは要しないものの,当該取締役の了知可能な状態におかれることを要する。
    ・Xは自らパソコンを操作することがなく,Y社内におけるXのパソコンはY社の秘書室において管理されていた
    ・XのメールアドレスにY社内で電子メールが送信されることがなかった
    ・Xにおいて,本件メールアドレスに取締役会の招集通知が送信されることを予期し得たというべき事情もうかがわれない
    → 了知可能な状態に置かれたとはいえないので,招集手続に瑕疵がある。
  4.  本件取締役会決議の効力に係る判断
    1. 取締役会招集手続の瑕疵に関する規範
      原則 取締役会の一部の者に対する招集通知を欠くことにより,その招集手続に瑕疵があるときは,特段の事情のない限り,瑕疵のある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効
      例外 その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは,当該瑕疵は決議の効力に影響がないものとして決議は有効
    2. あてはめ
      ・本件取締役会はXを除く全員出席,棄権1名を除く全員の賛成をもって本件決議が成立。
      ・Xは判断能力が低下しておりそれをAが利用してY社に混乱をもたらすことなどを防止するためにXを代表取締役から解職するという意見を形成し,そのような判断をすることもやむを得ない状況であった
      ・本件取締役会前夜にXを除く取締役らが形成していた上記意見は,相応の根拠に基づく強固なものであったと推認される
      → 本件では,Xが本件取締役会に出席してもなお本件決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情がある。
  5.  まとめ
    昭和39年8月28日最高裁判決,昭和44年12月2日最高裁判決,平成2年4月17日最高裁判決などにおいて,上記4(1)の規範は固まっている。
    したがって,取締役会招集手続に瑕疵がある場合,その決議の有効性については,例外にあてはまるかどうかの判断が争点となる。これまでの例では,異議なく取締役会に参加したり,既に辞表を提出していた場合などについて,例外にあてはまると判断されている。
    なお,代表取締役解任の議案について,当該代表取締役は特別利害関係人にあたるのかという論点があるが,特別利害関係人に該当し決議に参加できないとするのが昭和44年3月28日最高裁判決である。その場合,取締役会への出席はできると解されている。
    本件においても,仮にXが取締役会に出席していたとしても決議には参加できなかったといえるが,一方で出席していたとしたら,審議の過程において他の取締役の決断に影響を及ぼす可能性もあるため,他の取締役らの意見が相応の根拠に基づき強固であったという認定が,本件の結論にとって重要であったと思われる。
    さて,非常にレアケースだが,取締役が勾留され接見禁止が付いている場合,どうすべきか。出席の見込みがほぼないのに了知可能な状況に置く必要があるのか,そもそも了知可能な状況に置くことが可能なのかなど問題点はあるが,現実的には,弁護人宛に招集通知を送付したり,本人宛に在監場所へ送る(接見禁止解除まで届かないが)しかなさそうに思う。

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