徳永・松崎・斉藤法律事務所

平成27年労働者派遣法改正の概要

2015年12月10日更新

永原 豪 弁護士

  1.  はじめに
    労働者派遣法が先日改正され,平成27年9月30日に施行されました。9月11日の成立後約20日で施行という慌ただしさでしたが,今回は改正労働者派遣法の概要についてご紹介いたします。
  2.  労働者派遣事業の許可制への一本化
    「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」の区別が廃止され,労働者派遣事業は新たな許可基準に基づく許可制に一本化されました。経過措置が定められていますので,施行日時点で届出により特定労働者派遣事業を営んでいる事業者は平成30年9月29日までは改正前の特定労働者派遣事業を営むことが可能となり,許可を得て一般労働者派遣事業を営んでいる事業者は許可のままで引き続き労働者派遣事業を営むことが可能です。
  3.  労働者派遣の期間制限の見直し
    1.  2つの期間制限
      改正前はいわゆる専門「26業務」については,労働者派遣の期間制限が定められていませんでしたが,施行日以後に締結された労働者派遣については,専門「26業務」であるかどうかにかかわらず全ての業務で以下の期間制限が適用されることになりました。

      1.  派遣先事業所単位の期間制限
        派遣先の「同一の事業所(雇用保険の適用事業所に関する考え方と同一であるとされています。)」に対して派遣できる期間は原則3年が限度とされています。派遣先が3年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には,派遣先の過半数労働組合等から意見を聴取しなければなりません。
        この期間制限は,施行日以降,期間制限の対象となる労働者派遣を行った日が起算点となり,派遣労働者が交替したり,別の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を開始しても起算点は変わりませんので注意が必要です。例えば,平成27年10月1日に労働者派遣契約Aに基づいて派遣労働者を受け入れた場合,平成28年10月1日に別の労働者派遣契約Bに基づいて別の派遣労働者を受け入れても,当初の平成27年10月1日から3年を超える段階で意見聴取が必要となります。
      2.  派遣労働者個人単位の期間制限
        同じ派遣労働者を,派遣先の事業所における「同一の組織」に対して派遣できる期間について3年を上限とする新しい規制が定められました。「同一の事業所」に対する期間制限についての上記の意見聴取を取っていれば,「同一の組織」でない限り,同じ派遣労働者を3年超えて受け入れることが可能となります。また,期間制限が業務内容ではなく,派遣される組織が基準であるため,担当する業務が異なっても「同一の組織」内での勤務である以上,派遣期間は通算されることになります。なお,「同一の組織」は,「課」や「グループ」等業務としての類似性,関連性があり,組織の長が業務配分,労務管理上の指揮監督権限を有するものとして実態に即して判断されます。
    2.  2つの期間制限に対するクーリング期間
      事業所単位及び個人単位の期間制限については,クーリング期間の考え方が採用されており,当初の派遣期間から3カ月を超えるクーリング期間があれば,派遣期間は通算されません。たとえば,一定の事業所との間で派遣期間3年の労働者派遣契約が終了した後,6か月後に新たに派遣期間2年間の労働者派遣契約を締結する場合,クーリング期間を経過しているため派遣期間は通算されません。
      もっとも,派遣可能期間の延長手続(労働組合等への意見聴取手続)を回避することを目的として,クーリング期間を経過した後に派遣の受け入れを再開し,実質的に派遣の受け入れを継続する場合には,労働者派遣法の趣旨に反するものとして指導等の対象となるとされていることには注意が必要です。
    3.  期間制限の例外
      派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者の派遣の場合,60歳以上の派遣労働者の派遣の場合,周期が明確な有期プロジェクト業務についての派遣の場合,産前産後休業,育児休業等を取得する労働者の業務に対する派遣の場合等,一定の場合には事業所単位及び個人単位の期間制限は及びません。
  4.  キャリアアップ措置
    派遣元事業主は,派遣労働者のキャリアアップを図るため,ⅰ段階的かつ体系的な教育訓練,ⅱ希望者に対するキャリア・コンサルティングを実施する義務が定められています。このキャリアアップ措置は,登録型派遣や日雇派遣の場合でも実施義務がありますので注意が必要です。
  5.  派遣労働者の均衡待遇の推進
    1.  派遣元事業主が講じるべき措置
      派遣元事業主は,派遣先で同種の業務に従事する労働者との均衡を考慮しながら,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生の実施を行うよう配慮する義務が定められていたところですが,改正法では,この均衡待遇の確保のために考慮した内容を本人に説明する義務があるとされました。派遣元事業主は,派遣労働者が待遇に関する説明を求めたことを理由として不利益な取り扱いをしてはならないとされています。
    2.  派遣先労働者が考慮すべき措置
      均衡待遇の推進のため,派遣先事業者に対して,ⅰ賃金水準の情報提供等を行うこと,ⅱ教育訓練の実施に配慮すること,ⅲ福利厚生施設の利用の機会を与えること,の3つの配慮義務が定められています。
  6.  労働契約申込みなし制度
    派遣先が以下の違法派遣を受け入れた場合,受け入れた時点で,派遣先が派遣労働者に対して,派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなされる制度が導入されました(派遣先が違法派遣に該当することを知らず,かつ,知らなかったことに過失がなかったときは適用されません。)。

    1.  労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
    2.  無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
    3.  期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
      改正法によって規定された事業所単位・個人単位の期間制限のどちらに違反しても労働契約申込みなし制度の対象となります。
    4.  偽装請負の場合
      偽装請負と判断された場合にも,労働契約申込みなし制度が適用されることになり,その結果,発注者との間の雇用契約と同一の労働条件(発注者との契約期間の定めがない場合にはその点も含みます。)での労働契約の申込みがみなされることになります。

一覧へ戻る

ページトップへ戻る