徳永・松崎・斉藤法律事務所

法廷百景
早期事案説明期日と集中争点整理期日

2016年02月29日更新

永原 豪 弁護士

  1.  通常民事裁判の審理について
    損害賠償請求等の民事事件の裁判では,当事者間における主張を行った後,争点整理(事件の争いとなるポイント)を整理した上で,集中証拠調(証人尋問等)が実施された後,判決言渡しという流れを取るのが通常です。争点整理においても書面での主張が中心となっているため,ときには当事者双方の主張がずれていたり,裁判所の意図とは異なっていることが少なくなく,審理期日の長期化の一因であると指摘されてきたところです。(ちなみに,裁判所が公表している統計によれば,第1審訴訟の平均期日回数は5.1回,平均審理期間は9.2月です。)弁論準備期日に同席された方の中にも双方が提出した書面を確認し,次回までの準備だけを確認し,極めて短時間で終わったことに拍子抜けされた方も少なくないと思います。
  2.  「早期事案説明期日」と「集中争点整理期日」
    このため福岡地方裁判所では,平成25年から争点整理を行う弁論準備期日の充実化を図るため,「早期事案説明期日」と「集中争点整理期日」モデルを策定し,運用を開始しています。
    「早期事案説明期日」は,訴訟の初期段階で,事件に関する重要な事実や事実経過,これらに関する証拠についての情報を開示し,裁判所を含めた当事者間で共通認識を構築することを目的としています。
    「集中争点整理期日」とは,複雑な事案において書面による主張・反論が繰り返され,事案の解明や争点の整理が進まない案件について,当事者が口頭で説明をした上で争点について口頭で協議して争点の認識を共有化することを目的とするものです。
    この「早期事案説明期日」と「集中争点整理期日」は,比較的早期に実施されるのか,一定期間主張・反論が進んで実施されるのかという違いはありますが,代理人が,裁判所に対して当方の主張を口頭で説明することは共通しており,これまでの口頭弁論手続きとはその内容が大きく異なっています。福岡地裁での労働審判をご経験の方であれば,労働審判手続きの冒頭に当事者双方がそれぞれ5分程度,主張内容および証拠についてプレゼンテーションしていますが,これが拡大したようなものと理解していただけるとイメージしやすいと思います。
    なお,若干古い統計ではありますが,平成25年7月時点では,福岡地裁に係属している民事事件の約13㌫で実施されているとのことです。
  3.  「早期事案説明期日」と「集中争点整理期日」のメリット
    「早期事案説明期日」と「集中争点整理期日」に対応するためには,これまでの主張の骨子を書面にて整理する(A4・1枚程度)必要がある上,わかりやすく説明するため説明内容について十分な事前準備が必要となります。また,その性質上,裁判期日の時間も1時間程度と通常の弁論準備期日よりも大幅に長くなってしまいます。(私も複数の事案でこれらの期日を体験しましたが,通常以上の準備が必要であることは痛感しております。)
    しかしながら,これらの期日では,当事者が口頭で説明した上で,裁判所の視点や関心のあるポイントを確認することができますので,その後の訴訟活動の方針を決めるために大変有益です。また,特に準備書面による主張・反論が繰り返されて争点がぼやけてしまった事案においては,争点が明確化するだけではなく,準備作業の段階で当方の主張内容を再検討することもできます。
  4.  御協力をお願いします
    これらの期日にはメリットが大きいと考えられますので,裁判所からこれらの期日の実施を打診された場合には,特段の支障がない限り,積極的に対応したいと考えております。皆様には一定のご理解とご協力をいただきますようお願いいたします。これらの期日のプレゼンでの弁護士の悪戦苦闘ぶり(?)を見ていただく貴重な機会になると思います。

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