徳永・松崎・斉藤法律事務所

法廷百景
近時の法令改正について

2020年08月08日更新

 本稿では,企業運営に関連する近時の法令改正について,その概要を簡単にではありますがご紹介させていただきます。

  1.  個人情報保護法(2020年6月12日から2年以内に施行)
     平成27年改正時に設けられた3年ごとの見直し規定に基づき改正がなされます。改正点は多岐にわたりますが,ポイントを何点か抜粋してご紹介させていただきます。

    1.  「仮名加工情報」が新たに追加されます。これは個人情報に含まれる記述を一部削除するなどして,他の情報と照合しない限り個人を識別できないよう加工した情報であり,当該情報を利用する際には,取得時の利用目的と別の目的でも利用できるなど,規制が緩和されます。
    2.  本人から事業者に対する開示請求について,その対象が拡大される(6ヶ月以内に消去される個人データ,個人データの授受に関する第三者提供記録)とともに,開示方法について,電磁的記録の提供も含め,本人が指示できることになります(現行法は原則書面交付のみ)。
    3.  提供元では個人データに該当しないものの,提供先では個人データとなることが想定される情報(個人関連情報)を第三者提供する際に,提供元に確認義務が課されることになりました。これは,いわゆるリクナビ事件(氏名ではなくCookieを同意なく提供した事案)を想定した規制となります。
  2.  会社法(2019年12月11日から1年半以内(一部除く)に施行)
     会社法の企業統治関係の見直しについては過去号(No.98)でも取り上げておりましたが,昨年末に改正法が成立しました。
     こちらも改正点は多岐にわたりますので,ポイントを抜粋してご紹介させていただきます。

    1.  株主総会資料の電子提供制度が創設されます。
    2.  株主提案権の濫用的行使の制限を目的として,同一の株主総会で提案できる議案数が制限されます。
    3.  取締役の報酬に関する規律が見直されるほか,会社補償や役員等賠償責任保険に関する規定が新設されます。
    4.  上場会社等において,現行法では社外取締役を置かない理由を株主総会で説明すれば社外取締役を置かない機関設計も可能でしたが,改正法では社外取締役の設置が義務付けられます。
  3.  育児・介護休業法施行規則(2021年1月1日施行)
     現行法では,子の看護休暇や介護休暇について,半日単位での取得が可能となっていますが,より柔軟に取得できるよう,時間単位で取得できるようになります。
     また,1日の所定労働時間が4時間以下の労働者について,現行法ではこの看護休暇や介護休暇を取得することができませんでしたが,改正により全ての労働者が取得できることになります。

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