徳永・松崎・斉藤法律事務所

法廷百景
判例集について

2022年02月21日更新

斉藤 芳朗 弁護士

  1.  法務担当者の方であれば,一度や二度は,「判例集」という言葉をお聞きになったことがあると思います。裁判所の出した判例が集められている書籍のことですね。●●のようなことを実行して裁判になった場合勝訴できるのか?といったことが懸念されるときは,過去の判例集を見て類似事案を探すと,およその方向性が分かります。そのような意味で過去の判例集は重宝がられております。
  2.  判例集についてもう少し考えてみます。まず,「判例」と「裁判例」の違いです。最高裁判所の判決が「判例」,それ以外の高等裁判所や地方裁判所の判決が「裁判例」ということになります。
     「判例」については,最高裁判所民事判例集又は刑事判例集,最高裁判所裁判集民事又は刑事に掲載されます。この2つは同じでは?…ですが,両者は別の書物で(前者は,民集・刑集,後者は,集民・集刑と略記されます),前者の方が重要性の高い判例が掲載され,そこに掲載された判例については最高裁判所判例解説という書籍で詳しく説明がなされる点が異なります。民集の現物をご覧になったことはありますか?昔の判例だと,個人情報もプライバシーも関係ありません。「原告は福岡市上小山町19番宅地42坪2号を所有していたが…小能見唯次の懇請により約15坪を賃料1か月300円で賃貸し,…右唯次は原告に無断で2階部分を増築し…」といった具合です。ただし,最高裁HPに掲載する際にはさすがに,A市B町宅地●坪といった具合に伏字で記載されますね。
  3.  一方で「裁判例」ですが,様々な雑誌に掲載されます。その雑誌にも,おそらく発刊時期が早いものからでしょうが,序列みたいなものがあります。判例時報(月3回発行,判時と略記)→判例タイムズ(月2回発行,判タと略記)→金融商事判例(月2回発行,金商と略記)→金融法務事情(月2回発行,金法と略記)…等の順序となります。
  4.  今から30年以上前の,私が司法修習生の時代には,裁判官から「判例時報か判例タイムズのどちらかは継続的に購入して,全部読むように」と指導されておりました。(私の大学の同級生で,大阪にある大手企業に就職し法務部に配属された者も,上司から同じようなことを言われ,自費で購入している,と言っておりました。) しかし,最近は,判例集がデータベース化されており,毎月定額を支払うことによって,パソコンから閲覧,印刷できるようになっております。皆さまの企業でもこのような判例検索システムを取り入れているところが少なくないと思います。たしかに,便利になりましたが,ざっと流し読みするには雑誌の方がまだまだ便利です。また,資料として保存し,裁判所に証拠として提出する際には,パソコンで打ち出して印刷したものよりも,雑誌をコピーした方が読みやすいような気がします。
  5.  法廷とは直接関係はありませんが,判例集についての雑感でした。

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