徳永・松崎・斉藤法律事務所

非常勤の社外監査役の善管注意義務違反が認められた事例
~セイクレスト事件・大阪地判H25.12.26~

2014年04月25日更新

熊谷 善昭 弁護士

  1.  はじめに
    今回は,代表取締役の不当・違法な業務執行に反対意見を述べ,辞任の可能性まで表明していた非常勤の社外監査役について,善管注意義務違反が認められた事件をご紹介します。
  2.  事件の概要
    セイクレスト社は,元ジャスダック上場で,平成23年5月に破産した大阪市本社の不動産会社です。
    同社は平成21年3月に債務超過に転落していたところ,同社代表取締役Aは,①調達した資金を合理性が疑わしい使途に使用し,②5億円の山林を20億円と評価して現物出資を受け,③個人コンサルタントBから紹介を受けた会社に多額の約束手形を振り出すなど,上場廃止の回避等の目的から違法・不当な業務執行を続けていました。そして,④平成22年12月には,調達した4億2,000万円のうち8,000万円について,取締役会決議で決定した使途に反して個人コンサルタントBに交付するなどしました。
    これらの一連の行為について,社外監査役を含む監査役会は,取締役会に意見書を提出し,「違法・不当な行為が継続されるようであれば,辞任等の対応をとる」旨を述べて反対するなど,その都度反対意見は表明していました。
    本件は,同社の破産管財人が,上記④の8,000万円の交付に関して,代表取締役の行為が会社に損害を与える違法なものであることを前提に,非常勤の社外監査役Xに対して,善管注意義務違反を理由に8,000万円の損害賠償請求をしたものです。
  3. 判決の要旨
    判決は,大要次のように述べて,社外監査役Xの損害賠償責任を認めました(但し,Xの重過失は否定し,責任限定契約を適用して,賠償額を監査役報酬の2年分である648万円に限定しました)。

    •  代表取締役Aは,支払原因が不明確な約束手形を振り出して資金を調達し,個人コンサルタントBらの求めに応じて使途不明の出金を行うなど,任務懈怠行為を繰り返していた。
    •  Xら監査役は,Aの任務懈怠行為の反復について十分に認識していたと認められるから,今後もこれらの任務懈怠行為が繰り返されるおそれがあることを予見できた。
      そして,平成22年12月に多額の入金があることとなっていたのであるから,Xとしては,Aが当該金員を不当に流出させるおそれがあることを予見できた。
    •  従って,Xは,取締役会に対し,Aによる資金流出を防止するためのリスク管理体制を直ちに構築するよう勧告すべき義務があったのに,これに違反した。
      また,Xら監査役が再三意見したにもかかわらずAの任務懈怠行為が繰り返された状況に鑑みると,Aの代表取締役からの解職及び取締役解任決議を目的事項とする臨時株主総会を招集することを勧告すべき義務もあったが,これにも違反した。
  4.  検討
    代表取締役の任務懈怠行為が反復されたという特殊事案ではありますが,辞任をほのめかして強く意見するだけでは足りず,リスク管理体制を直ちに構築するよう勧告する義務や解任のための臨時株主総会招集を勧告する義務までを認めたものであり,社外監査役にとっては厳しい判決ともいえます。
    経営陣の不当・違法な行為が予見された場合に,監査役としてどのような行動をとるべきかを考えるにあたって一つの重要な参考になる裁判例ですので,ご紹介させていただきました。

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