徳永・松崎・斉藤法律事務所

パワハラ防止措置を講じることが義務化されます
(改正労働施策総合推進法の成立について)

2019年08月06日更新

恩穗井 達也 弁護士

  1.  改正労働施策総合推進法の成立
     令和元年5月29日,改正労働施策総合推進法(以下「本改正法」といいます。)が成立しました。
     各種報道にて「パワハラ防止法が成立」等と報じられているところであり,ご覧になった方もいらっしゃると思いますが,本改正法は,いわゆる「パワハラ」の定義を,法律として初めて示すとともに,企業(事業主)に対し,パワハラ防止のための相談体制の整備等の措置を講じることを義務付けたところに特徴があります。なお,本改正法のうち企業の措置義務に関する諸規定の施行は,公布から1年を超えない範囲内で政令で定める日とされており,2020年春にも施行される見込みとも報じられています(ただし,中小企業については猶予期間が設けられ,その間は努力義務にとどまります。中小企業にかかる施行は2022年春の見通しと報じられています。)。
  2.  パワハラの定義について
     本改正法第30条の2は,「事業主は,職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう,当該労働者からの相談に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定めています(同条第1項)。
     この規定によって,パワハラの定義として,①職場において行われること,②優越的な関係を背景とした言動であること,③業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること,といった要件を満たすものをいうことが示されたといわれております。
     この点,従来から「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」(平成24年1月,厚生労働省)や「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書(平成30年3月,厚生労働省)において,パワハラの概念が示されており,上記定義はこれらに沿った内容といえます。そのため,実務的な観点で考えると,これまでのパワハラに対する考え方を大きく変える必要はありませんが,本改正法によって,これまでの考え方に法律上の根拠が与えられたという点に意義があるといえます。
  3.  企業としての措置義務について
     上記の本改正法第30条の2によって,事業主は,パワハラにかかる相談体制の整備その他のパワハラ防止措置を義務付けられることとなります。
     具体的にどのような措置を求められるかについては,今後,厚生労働大臣が指針を定めることとされていますので(同条第3項参照),当該指針の内容を踏まえた上で,各社それぞれの実情に応じて検討する必要があります。
     なお,この措置義務に違反した場合について,直接の罰則規定はありませんが,かかる義務違反は厚生労働大臣の勧告の対象となる上,この勧告にも従わない場合は,その旨を公表されることも予定されています(本改正法第33条第2項)。
  4.  パワハラ事案への具体的対応について
     企業としては,本改正法による措置義務を踏まえ,各社の実情に応じたパワハラ防止にかかる体制を整備することになると思いますが,実際のパワハラ事案への対応に当たっては,パワハラに該当するか等判断に悩むケースが出てくるかと思います。特に,職場の上司から注意指導,叱責があったとしても,それがパワハラに当たるというためには,「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動(上記③)である必要がありますが,この点の判断は微妙なケースも少なくありません。本改正法により,これまで以上にパワハラに関する相談等が増えることも予想されますので,対応に悩まれましたら,当事務所にご相談ください。

一覧へ戻る

ページトップへ戻る