徳永・松崎・斉藤法律事務所

労働法の部屋
セクハラ行為に対する裁判所の判断が厳しくなっています

2020年08月08日更新

斉藤 芳朗 弁護士

  1.  裁判所は比較的重い懲戒処分であっても有効との判断をしている
     セクハラとは,職場における性的な言動によって特定の個人に不快感を与え、あるいは職場環境を乱す行為をさします。
     ところで,社員がセクハラ行為を行った旨の通報等があった場合,企業としては調査し,懲戒処分を実施するか否かを検討しますが,最近公開されている裁判例をみますと,裁判所は,比較的重いと思われる懲戒処分であっても,その処分が妥当であるとする判断をしているようです。
  2.  裁判例の紹介
     L館事件(最判平27・2・26)は,公共団体が出資する第三セクターの管理職が1年間にわたり,女性社員に対して「自分はもう何年もセックスレスだ」等のわいせつな発言をしたとして,1か月の出勤停止,1等級降格する処分を受けた事案です。加古川市事件(最判平30・11・6)は,一般廃棄物の収集・運搬の職務に従事していた地公体の職員が勤務時間中に立ち寄ったコンビニの女性社員に対して,自分の手を女性社員の手に絡め,自己の股間に軽く触れさせた行為をしたとして,懲戒休職6カ月の処分を受けた事案です。埼玉県教職員事件(東京高判平30・9・20)は,中学校の新任教諭が,教諭になる直前まで勤務していた塾の教え子(15歳)と交際し,自宅で添い寝等をしたことを理由として懲戒免職処分(民間企業でいえば,懲戒解雇処分)を受けたという事案です。
     これらの事案において,高裁・地裁は処分が重すぎるとしましたが,最高裁・高裁はこの判断を取り消して、処分は相当であるとしております。
  3.  処分の相当性を決める事情はなにか
    1.  「被害者から明白な拒絶の意思表示がなかったこと」「加害者が当該セクハラ行為について事前に注意を受けていなかったこと」「現場の作業員であること」等の事実をもって,加害者に有利な情状と考えることができるのがよく問題とされます。しかし,上記裁判例でこのような事実があるからといって,この事実をもって加害者に有利な事情とすることはできないとされております。(「被害者から明白な拒絶の意思表示がなかった」からといっても,職場での人間関係が悪化することや客との間のトラブルを回避するために,被害を訴えなかっただけであり,これを加害者に有利な事情として評価することはできないでしょう。)
    2.  「被害者の同意があったこと」はどうでしょうか。この点はケースバイケースですが,埼玉県教職員事件では,その行為が周囲に与える影響を考慮すると,たとえ被害者とされる者の同意があったとしても,その点を有利な事情とすることはできないとしております。
  4.  まとめ
     このように,セクハラ行為に対する裁判所の評価は厳しいものに変わってきておりますので,注意が必要です。

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