徳永・松崎・斉藤法律事務所

法廷百景
裁判所との協議会

2017年04月25日更新

恩穗井 達也 弁護士

「法廷」ではありませんが,今回は,裁判所との間の協議会の話をさせていただきます。
弁護士会と裁判所との間では,裁判手続の運用などにかかる協議会が開催されることがあり,弁護士会の労働法制委員会と福岡地方裁判所の労働集中部(第5民事部)との間でも,年3回,協議会が開催されております。私は弁護士登録してからずっと労働法制委員会に所属しており,昨年からは同委員会の事務局長をしておりますので,この協議会にもほぼ毎回参加してきております。
この協議会は,平成18年に労働審判がスタートしたことをきっかけに,労働審判の運用について協議することを目的として始まったものです。ここ最近では,労働審判の運用に加えて,労働事件一般についての諸問題を議論するようにもなっております。もちろん,個別の案件について触れることはありませんが,そこに至らない範囲で,労働事件の審理をしている裁判官の本音のようなものも垣間見えることがあり,毎回,興味深い議論がされております。
労働審判制度がスタートして10年以上経ち,運用も徐々に安定してきているようです。個人的な印象としては,スタート当初は,「なんとか調停(話し合い)を纏めたい」という審判委員会(労働審判では,裁判官1名と専門的な知識や経験を有する労働審判員2名で構成された審判委員会が審理を行います。)の傾向が今より強かったように思えます。私自身の体験としても,かなり問題が積み重なった労働者に対して慎重に判断して行った解雇事案に関し,労使双方の審判員を含めた審判委員会から「確かに解雇は相当な事案ですね」とまで言ってもらっていたにもかかわらず,いざ調停の話になると,「なんとかいくらか出せませんか」と(かなり粘り強く)調停を勧められたことがありました。その事案では調停は成立せずに審判(審判委員会が一定の解決案を示すもの)となったのですが,そこでの審判内容は「解決金10万円を支払え」というもの。異議を出して訴訟に移行すれば,まず労働者側の請求を棄却できるだろうとは想定できるものの,訴訟に要する時間と費用を考慮し,泣く泣く審判を受け入れて10万円を支払った思い出があります。
最近では,このような傾向がないとはいいませんが(調停を中心とする制度ですからある程度はやむを得ないところです。),それぞれの主張と証拠を見ながら,それに沿った形で調停を進めていくという意識が強くなってきているような印象があります。実際,労働者側の主張に無理があるような事案では,審判委員会も無理に調停を進めることはせず,審判で棄却するという事案もあるようです。
労働審判の特徴はやはり「原則3回以内」という迅速な審理にあります。近年の福岡地裁の状況でも,平均で申立てから70日程度で終結しているようであり,訴訟等と比べると圧倒的に短い期間で解決しております。紛争の早期解決という観点からすると,使用者側としてもメリットのある制度といえますので,今後も,労働審判が適切に運用されるよう,個々の事案に尽力することに加え,裁判所との協議の場でも意見を述べていきたいと思います。

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